12.7 大阪拘置所前で2007年12月13日 08:28

 ここんとこ、もうふた月以上も終身刑のことばかり朝から晩まで、寝てもさめても思いつめ状態で、他になんもできんかった。……
 というわけで、今みてみたらブログも九月一九日からわたし書いてないんやな。一二月一日付け「風」四八号に——<終身刑問題>をめぐって——を書いたんやけど、模索舎においてもらってるので、関心ある方は読んでみてください。

 一二月七日、鳩山法務大臣の命令によって三人の死刑囚が殺された。大阪で殺された池本登さんは七四歳やった。地下鉄都島を降りて地上にでたらどしゃぶりの雨やった。ひろったゴミ袋をかぶって大阪拘置所へ。夜の拘置所前に七人が集まった。雨は小雨になっていた。李さんが門前に花を供えた。
 マイクが回ってきた。
 「何でそんな、高齢の人をいまさら殺すんですか。何の為に殺すんですか」
 「刑務官のあなたは、上からの命令やからしかたない。法律で死刑がある以上、執行するのが仕事なんやからと、あなた自身どんなに自分を正当化しようとなだめすかしても、こころの底では、この死刑執行の仕事に納得できていないとおもいます。あなたがそれを一番よく知っておられるとおもいます。」
 「池本登さんを一番よく知っていたのは、刑務官であるあなた方だったはずです。七四才の池本登さんは、どんな様子で獄中生活を送っておられたのでしょう。どんな顔つきで、どんな声で話し、どんなしぐさで怒り、時には刑務官のあなたから気安く声をかけられて、笑いあったりもされたこととおもいます。そんな池本さんを今さら殺さなくても……という思いは世間のだれよりも刑務官のあなたが一番強く抱いていた気持ではないですか?」
 「死刑というけど、殺人です。そんな仕事があっていいはずはありません。妻にも子供にもいえない仕事ですよね。そんな仕事を強制する権利は誰にもないはずです。死刑制度に賛成というんやったら、賛成という人が直接やったらいいんです。わたしの本来の任務は更生させることやから人殺しの仕事なんか出来ませんって、上司に云っていいんです。云ってください……」
 いつもだと、もう灯りが消えてる正門脇の受付に刑務官が一人、マイクの声を聞こえないふりして聞いている。暗くしーんとした前庭にも幾人かの刑務官がウロウロしている。きっと聞こえても聞こえないんやろなと思いながら、それでも云わずにはおれんかったんや。(風)