餌場——いま、監獄は(その1)2007年03月13日 10:07

 去年5月に「受刑者処遇法」が施行された。これは明治時代にできたままの「監獄法」が100年ぶりに「改正」された——いうことやった。Tシャツ裁判でも面会の自由や手紙のやりとりを争ってるわけやけど、たしかにわたしの知ってる範囲でも、いままで手紙のやりとりができなかったんが、できるようになった例はけっこうあるし、新法によってこれから監獄はずいぶんと開かれたものになるはずと獄中のひとたちは期待してたんや。
 ところが、ついこないだ獄中から、こんなたよりが届いた。彼はずっと冤罪を訴えつづけながら18年の刑を宣告されたんや……でも、この長い長い獄中生活もあと8ヵ月で満期になる。(風)

 新法のおかげで、月に2回も嗜好品(甘食)にありつけるようになった。……しかし、この喫食方法がなんとも味気なくて、折角の嬉しさを半減させる。前は、級別集会と呼ばれて、土曜日(休日)の午前中に、該当者は講堂に集められて、そこでビデオ映画をみながら、その間、配られた菓子をゆっくり食う。この行事が、ここでの生活の中で一番嬉しい時間で、誰もが早く進級して集会へ参加したいと思っていたのだ。
 それが今では、リクリエーションという位置づけではなくなって教育行事ということになった。しかも時間に30分という制限がついた。
 入口で袋詰め菓子を渡されると、定まったパイプ椅子に着席する。そして職員の「始め!」の合図で、一斉に食い始める。制限時間は「終了!」の合図までの30分間である。
 この日の内容は、板チョコ1枚、甘納豆1袋、かりん糖1袋、カレーせんべい1袋にペットボトル入りコーヒー500CCだった。これだけを30分間で普通に食えるのか、どうか試してもらいたい。
 周りには20名ほどの警備隊が取囲んで、絶えず「キョロキョロするんじゃない。まっすぐ前を向いてろ!」「そこのお前!何をしゃべっているだ」「足を伸ばすんじゃない」と怒声を飛ばす。
 こんな厳重監視の中で、僕らはただひたすら菓子を食うのである。……
 ああ、僕らは餌場(えさば)に集められてヨーイドンで食い始め、時間がすぎると餌場のフタがバタンと閉まってしまう牧場の牛と同じだなあ……そして……食いきれなかった分は後髪引かれる思いで廃棄して部屋へ戻るしかないのである。(つづく)