チャングムに学べ2008年03月04日 09:02

 きょう届いた吉田智弥さんの「蛇行社通信」(無断転載自由)からの転載です。一人で読むのはもったいないので。
 大阪に市民共同オフィス「SORA]というのができたので、(広くてびっくりした)そこで「死刑と人権」(年5回の発行)の印刷・発送ができるようになって27日、手伝いに行ってきたんやけど、智弥さんは一回一回手書きの宛名封筒を自分でつくり、一枚一枚切手を貼り、それを毎月きっちり発行されてる。中味はもちろんぜんぶ智弥さんの文章。運動団体の機関紙はたくさん送られてくるけど、こうした味のある個人通信いうのは、いまはほとんどみあたらない。いまどきはブログがそれになってるんやろ。このわたしかてブログやもんなあ。(風)

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チャングムに学べ

 実際に被害を受けた人たちには気の毒であったが、「日本の国民」としては、中国製冷凍ギョーザに混入していた農薬で中毒になるのは、自業自得の感じもする。
 現地の食品メーカーと契約した日本企業は、食材の農産物を買いたたき、安い労働力をこき使って、ひたすら日本の家庭調理人に手抜きをさせるための半製品を大量に生産させてきた。そちらの犯罪性の方がはるかに大きい。
 事件が「当該の工場労働者による作為によるものか」という報道があった時に、むかし読んだ、ある同人誌に掲載されていた小説を思い出した。
 そこには、チョコレート工場で働いている労働者が、毎日の仕事のうっぷんを晴らすために、固形になる前の、タンクに貯められた液状のチョコレートに向けて、「ぺっ」と唾を吐く場面が書かれていた。或いはそれは、日常的な職場の風景か。
 もう一つ、ある時、街でむかしの教え子にバッタリ出会った時、「いま何をしてるの?」と尋ねると「フリーターです。でも先月からY製パン工場で働いてますねん」と言い、続けて、「先生、Yのパンは食べたらあかんよ」と付け加えた。
 もしかしたら、赤福や雪印や不二家などで働いていた労働者たちも、身近な人たちに、そのように伝えていたのではないか。後を追いかけて、次々と賞味期限などの「偽装」が新聞の見出しになり、どこかの会社幹部が謝罪会見を行うという順番。
 この国の「食」が「どこか根本的に壊れ始めているのではないか」と最初に感じたのは、学校給食のセンター化に反対する住民運動と出会った時であった。給食のハンバーグの中から小さな鉄球がでてきたので、調べてもらったら、肉がオーストラリアに棲む大ネズミ(ヌートリア)のものであったことが分かった。鉄球は散弾銃の弾だった。動物園の餌として輸入されたものが給食に廻っていたのである。
 ある集会では、給食に出る白身魚のフライには(子どもの「安全」のために)予め骨が抜かれているが、その骨を取る作業は「東南アジアの貧しい児童労働によって担われている」という報告もあった。また、ある調理員さんの話では、せっかく作ったカレーが大量に残されて返ってきたので「どうしたの? おいしくなかった?」と子どもたちに尋ねると、「うん、ボンカレーの味と全然違うもん」と答えたとか。
 けれども、共働きでクタクタになって帰宅した親が、お腹すかせた子どもに急かされてレトルト食品を食べさせたとして、誰が責めることができるか?
 冷凍ギョーザ事件の犠牲者も恐らくそうした人たちである。そのように、国境を越えて格差社会の下層の人たちが互いに傷つけあう。やがて子どもたちの味覚が壊れる。
 どうすればいいのか? 今すぐには、あのテレビ番組の「チャングム」から身土不二、医食同源の原則を学ぶことぐらいしか思い浮かばない……のが悲しい。