年がら年中木枯らしピューピューやけど…… ― 2007年05月21日 11:00

G君はいろんな事情で東京から田舎へ行った。田舎にかえっても、集会やデモがあるというと東京にでかけていってたんやけど、自分の住んでる田舎でも何かやりたいと思って、集会を計画したらしい。
ところが、当日の参加者は、東京からきてくれた彼の友人だけで、その上もう会場は貸せないと言われてしまったというんや。どんな集会名で、どんな宣伝をしてたのかくわしくはしらんのやけど、地方で孤立している一人ひとりにとってG君のはなしは他人事ではないよな。
このG君のはなしを聞いて向井さんのことを思い出した。
3月の中ごろ、N君と青春18切符で姫路に行ってきた。姫路は向井さんが戦争中に飲み屋で偶然知り合ったフリカドさんいうひとを頼って疎開して、そのまま住み着いた場所なんや。その亀山いうとこは、なんでも秀吉の頃に寺を守って村ごと移住してきたという古い町で、「30年住んでもよそ者やった」と向井さんはいうてたけど、その家まだあるかなあ、いうて探しにいったんや。
「たしか、この家や」とやっとみつけたんやけど誰も住んでる様子はなく、門のなかは荒れ果ててる(写真やとえらいきれいに見えてるけど)。隣の家で聞いてみることにする。80歳くらいのおじいさんが出てきた。「ずいぶん昔ですけど、となりに向井孝さんいう人が住んでましたよね」「ああ、覚えてますよ。玄関先じゃなんやから、まあ中に入りなさい」いわれて、思いがけなくいろんな話をきくことになったんや。
「向井さんいうひとはアナーキストやったですね」
「えっ? なんで知ってるんですか?」
「家の表札に書いてあった」
「ええっ?? アナーキストって、表札に書いてたんですか?」
「いや、日本アナキスト連盟・姫路支局いう札が表札とならんでぶら下がってた」
「ああ、それならわかります。向井さんって、変わった感じでしたか?」
「いいやぁ、ふつうでしたよ。会うとふつうに挨拶しはるし。奥さんとは親しくしてましたし……。
アナーキズムいうのは、無政府主義いうことでっしゃろ。はじめのころは町内の集まりに向井さんもでてきて、無政府主義を主張してはりましたな。でもそれはとおらんかったな……」
向井さんは戦後アナ連に加盟して、アナキストとしていろいろやろうと一人で頑張ってたんやな。まだ向井さん20代のころや。メーデーにいっても赤旗が乱立するなかで、たった一人だけの黒旗で、こころはいつも「ピューピュー木枯らしが吹いてた」いうとった。
そやからG君、地方で仲間をつくるのは、いつでも難しいことやと思うよ。でも各地にはぽつんぽつんとたしかに仲間はいるし、世界に眼を移せばさらにたくさんの仲間がいる。そして、過去にも未来にも、個から出発する仲間が、いつでも存在してるんやってことを、わたしは確信してるで。(風)