良い抗議者と悪い抗議者2007年06月04日 15:39

アウトノーメカレンダー'94より

 けさ、ロストックの反G8サミット・デモのニュースを知った。多数のケガ人と拘束者がでたらしい。さっそく新聞社系のニュースをいくつか探して読んだ。
 「黒装束の連中が、デモで暴れる機会をうかがっていた……」いかにもまことしやかな警察情報をそのまま翻訳して記事がつくられていた。「赤旗」は、「主催者は暴力を非難」と、ぬけめなく付け加えている。
 G8になぜかれらが抗議するのか。「衝突」以外に、かれらがそこで何日もの間、どんなことを行っているのか。また、「衝突」にいたるまで、どのような規制と挑発が不当に行われていたのか。そんな背景は、全く無視されたままなのだ。

 「良い抗議者と悪い抗議者」ということばを思い出した。それは、ジェノバでカルロ・ジュリアーニが殺されたあと、たまたま見つけたニュース・サイトで交わされていたコメントにあったことばだ。
 死の出来事の後で、やや感情的なコメントがつけられていて、下の方に、良い抗議者と悪い抗議者とを分けてはならない、という短い投稿があった。シアトルでスターバックスが破壊されたあとも、〈かれら〉は、悪い抗議者だといわれていた。今回のロストックでは、また更に強調して云われるのだろう。

 しかし、いま必要なことは、抗議者を選別することでは絶対にない。平和を標榜する戦争をつづけ、収奪の構造を固定化する政治家たちの側に立つのか? 人よけのフェンスの中で、人間と自然の生命を取引しあう会議から、奪い返す側に立つのか?
 ぼくは、第三者的立場で、これは良い抗議だ、悪い抗議だ、などという評価や批判をする立場に立つことを拒否したい。(MN)

*http://g8-tv.org/
Black Block in Rostock
Rallye Global Agricultural Action Day
↑クラウスがここに映っててうれしいよ。古い友人たち!

from G8 protests2007年06月07日 00:19

 6/6付・東京新聞朝刊に、反G8行動へ日本から参加している人の声が紹介されている。このblogを見ている人にはお馴染みかもしれないけれど、同紙「こちら特報部」欄。「お祭りデモある」と題された記事。現地の様子をこれまででいちばん詳しく伝えている記事だと思う。
 それから、infoshopのnews kioskにはいくつかの現地レポートがあがっている。
Germany: Pics from G8 protests
http://www.infoshop.org/inews/article.php?story=2007g8-pics
Germany: More Pics From G8 Protests
http://www.infoshop.org/inews/article.php?story=2007-g8-pics
 以上、参考までに(MN)

負けても亀へん?2007年06月07日 17:03

 吉田智弥さんの個人誌「蛇行社通信」が届くのをわたしは毎月楽しみにしてるんやけど、今月号の「負けても亀へん」いう記事を読んでうなってしもた。
 智弥さんは、いま奈良県立大学で教えてはって、「一方通行の授業ばかりだと、私も疲れる。学生たちも疲れる」いうことで、時々、グループ討論に切り替えるんやて。テーマは幾つかあるけど、今回は「兎と亀」。あの「兎と亀」の話を題材として、こんな討論をするんや。

 もし兎が走り抜いておれば、亀は完敗していた。
 その時、亀はどう言い返せばよかったか?

 100人ほどの学生を6班に分けて、討論をしてもらった。読解力も想像力も問題のうちやから、出題者は補足説明一切しないで、ただだまって徘徊するだけ。外見には、どのグループの討論もなかなか盛り上がってる様子やった。その後、各グループから数名が選ばれて、みんなの前で討論内容を紹介して、自分の意見を述べていく。そして——

 兎から「世界のうちでお前ほど歩みのノロイものはない」といわれたら?
 これまでやったら「泳ぎやったらオレの方が速いわい」とか「走るのが遅くて、何が悪いねん」という回答に笑い声と拍手がおきた、という。
 しかし今回、智弥さんはその報告を聞いて、肌が寒くなった。
 というのも、その回答が、「我慢をする」いうものやったからなんや。「ノロイのは事実であり、実際に兎と競争しても勝てないのだから、ここは我慢するしかない」。2人がそのように発言して、教室内からの支持もまんざら少なくはない。
 こんな「回答」が出たのははじめてのことやったそうや。

 最初から白旗を掲げて「我慢する」——世の中を思うままにしようとしてる者たちにとって、こんな都合のいい話はないやんか。「我慢」の思想が、ジワジワと沁み広がってきてるんやろか……
 同じ智弥さんの文章ではじめて知ったけど、いま、「ゼロ・トレランス(非寛容)」いう教育哲学いうのがあって、それが進行しつつあるんやと。一つの価値観を押し付けて、その敗者に対して「我慢」を強いる方法論やねんて。

 ドイツの反G8には、「我慢」しないものたちが世界中から集まってきてる(この「我慢」が好きな国からも)。今日もみるみる1万人もの規模にふくれあがって、鉄道を止めようとしたり、フェンスに近づこうとしてる。
 「我慢」にも限度がある。「我慢」が「我慢」である限り、それはいつかきっと爆発するんや!!! (風)

そこら中にみえない寄場がある2007年06月13日 14:53

 きのうNHKのクローズアップ現代「街をさまよう若者たち——新しい形のホームレス」という番組をみて、慄然とした。ご飯をたべる箸が、とまってしもた。
 高校を出ても田舎には仕事がないので、東京にでてきた。貯金もなく、頼る知り合いもないからアパートも借りられず、ともかく日払いでお金をくれるところをさがして働いてるんやけど、食べるのがやっと。仕事にありつけた日は、インターネットカフェやマンガ喫茶に1日1,000円ちょっとくらいで泊まる(イスしかないから横にはなれない。これじゃ、むかしのドヤの方がましやんか)。
 彼は派遣会社から仕事をもらってる。手にできる日当は5,000円ちょっと。親会社から派遣会社に1人あたりでてるのは、1万2,000円。そのうえ、会社は年金や保険を負担したくないから仕事の契約は14日ごとに区切られる。やっと仕事をみつけても、すぐにまた仕事探しや。仕事がない日の寝床は路の上。

 派遣「会社」なんていうけど、でもこれは釜や山谷の暴力手配師といっしょやろ? えらいきれいな高層ビルに事務所があるだけで、もっと悪質で組織的や。
 きれいといえば、彼の泊まってるインターネットカフェや、マンガ喫茶も一見きれいやった。わたしの知ってる釜ガ崎や山谷とはえらいちがいや。
 釜ガ崎や山谷はしょん便臭かったし、ゴミだらけやし、ほこりっぽいし、見るからに何日も風呂に入ってなさそうなきたないおっちゃんがよろよろ歩いてた。信号なんかまもらんし、自転車に乗ってたらすぐオマワリに職質くらうし、路上にゴザをしいて、鍋や釜やひろってきた雑誌やら、かたっぽうだけの靴やとか、ありとあらゆる品物が並べた店があちこちにあって、その傍の溝におっちゃんが落ち込んで、おしっこもらしてそのままねむってる。ドヤは、布団1枚やっと敷けて、まっすぐ立てないようなとこ。なんやいかがわしい店からヤーさんがでてきて、昼間から見張りをたてて博打をやってる。暴動も起きる……
 そこは、あきらかに他とは違う場所やった。あそこは怖いところやから行ってはアカンよ、なんてサラリーマンとこのこどもはいわれてたやろ。
 景気不景気にもろ影響をうけて、使い捨て可能な存在として理不尽な扱いをうける人びとが暮らす街は、それでも、労働者の街やった。あちこちの飯場を渡り歩いてる人も、正月仕事のないときは帰ってくる場所や。そこにはなにより仲間がいる。仕事がないときはお互いさまいうて、めしをおごってくれる。早朝から夜遅くまでやってる銭湯もあるし、安くて食べられる食堂もある。カップ焼きそばやコンビニ弁当よりずっと栄養もあって、うまい。

 いまや、そこら中がみえない寄場化してる。国家ぐるみ企業ぐるみの組織化で、暴利はスマートにむさぼられる。セビロ姿の悪質手配師の顔つきはすずしいもんや。こういう商売が、なんというても「合法」らしいからな。わたしも競艇場の予想紙の売り子の前はマネキンの仕事ばかりようけやったけど、しかしこのピンのはね方はいったい何なんや? マチ金そこのけのアコギさや。
 画面に映し出された若者たちは高校も卒業してパソコンもできるというのに、仲間もおらず、ひとり孤立して、都会の片隅で疲れはててる。何に翻弄されてるのかわからんまま、どっぷりと不安にひたされて暮らす気分いうのはどんなもんやろ。こんな人たちが、どこにも、わんさと……。
 おわりの方で、フリーターの組合旗をかかげて、派遣会社にデモをかけてる若者たちの姿が映像に出てきた。仕切り板で囲まれてるような「寄場」やったから、なかなか隣のひとと出会えへんかったけど、風向きは変わってきてる。
 さっきもグッドウィルユニオンの若い仲間があつまって、「グッドウィル・折口雅博会長への公開質問状」を出したという話を電話できいた。「データ装備費」なんて実質のない名目で、1人1仕事につき、200円かすめとられてた。ごっそりピンハネしてから、さらにやで。まったく、ようやるわ……。*http://ameblo.jp/goodwillunion/entry-10036492856.html
 もう、だれだって黙ったまま野垂れ死にするわけにはいかんやろ。
 そやけどほんまに、こんなことに……(風)

7/1吉田智弥さんを囲んで 『安心を求める人びと——何気ない、「普通」に支えられる死刑』2007年06月15日 09:25

 いま、この社会は、弱者や異端に対して、はっきり悪意と敵意をもって向ってきてるな、と感じています。
 たぶん集まるひとすくないとおもうので、大阪近辺の方、ムリしてでもでかけてきてください。わたしも是非参加したいと思っています。(風)

       *

7/1吉田智弥さんを囲んで
安心を求める人びと——何気ない、「普通」に支えられる死刑

 昨年のクリスマスに続き、4/27死刑執行がありあわせて7名が殺された。法相長勢は、6月国会閉会後にさらに3名の執行をするといっているらしい。
 「厳罰化」により死刑確定囚は100人を越え、大量死刑執行の時代に突入したと言われている。殺人事件は減少しているといわれているのに、新聞テレビでは「凶悪殺人」の言葉が飛びかう。
 被害者(遺族)は、「吊るせ、殺せ」と叫び、それがテレビで流される。
 被害者が裁判に参加し発言できるようになるという。ただただ「報復」の為の裁判となる。
 真実を求め加害者への弁護をすればバッシングが行われ「弁護士資格剥奪」をさえ言われる。
 「年金」「北朝鮮」には目の色を変えて抗議しても、大量死刑—厳罰化は問題にはならない。
 むしろ人びとは、つくられた「不安」に煽られ「安心」を求める。「何気ない、普通に支えられた」自分の生活を大事にするだけ。「死刑がなければこの世は闇だ」を真実思っているようだ。
 こんな中で、何をすればいいんやろうかと思います。
 一人一人の思いを持ち寄って、「吉田智弥さんを囲んで」の集いに参加しませんか。

日時: 7月 1日(日) 13:00 開場 13:30 開始 
場所:ドーンセンター・和室 (京阪・地下鉄天満橋駅歩5分)
   資料代・500円
主催:死刑廃止フォーラム in おおさか

帰る場所がない2007年06月16日 08:13

 “満期釈放者「帰る場所ない」4割超——30年前には9%”——という朝日新聞朝刊の切り抜きを送ってもらった。日付は先月の27日やから、もうみんなは知ってる記事やろな。

 30年まえ、山谷で知り合った鈴木国男さんが大阪拘置所で殺されて、わたしはそれから監獄いうものに目をむけるようになった。とりあえず自分にできることはなんやろと考えて、獄中に図書を差し入れる「たんぽぽ図書館」いうのを仲間をつのってはじめたんやけど、びっくりすることばかりやった。
 たとえば、政治犯は獄から出てきたら、行くところや、迎えてくれる仲間や友人が多少はいるけど、刑事事件で「犯人」として獄に入れられた人たちは、満期務めて出てきても行くところがないんや。死刑になっても、遺骨の引取り手もない……。住む場所もない、金もない、仕事も、相談する人もいてへん、いうことになったら、「再犯」しかないやんか。
 それでも、この新聞記事によると、30年まえのあの頃は「帰る場所ない」人は9パーセントやったんか。それが、いまは40パーセントを超えてるなんて……。

 去年の11月、突然見知らぬ青年から手紙がきた。今回5度目の刑務所生活。残刑1年10ヶ月……中学時代を少年院……そのあと2回の少年院、5回の刑務所。これまでずっとヤクザで……。
 彼はどういうことからか、アナキズムに関心をもちはじめ、模索舎で「黒」を手に入れ、わたしの名を知った——。
 去年5月の新受刑者処遇法の施行で、友人・知人にも手紙が出せるようになって、わたしを申請したという。「女掠屋リキさん伝」に登場してくる、最底辺のアナ仲間の人生を地でいってるような……そんなかれの気持ちにこたえるにはほど遠いけど、かれが希望するアナの本を少しづつ差し入れたり、短い手紙や葉書を書いたりするようになった。
 こないだ来た手紙には「いま、ふうさんが私にとってはすがれるひとで……」なんて弱気なことが書いてあるから、「アナいうのはな、独りで立ついうことなんやで」いうて返事したんやけど、来年かれが出所してきても、仕事に部屋に……そうした具体的なことで、わたしがめんどうみれることは殆どないやろ。
 4割超の「帰る場所ない」社会——をひどいもんや、というのはたやすい。でも、その万分の一でも自分が実際に引き受けることができるか、いうことになると、なんにも力になれへん。それがほんまのところなんやから、情けないはなしや。(風)

紙版「おさきまっくろ」2号完成2007年06月22日 12:25

紙版「おさきまっくろ」2号

 紙版「おさきまっくろ」2号ができました。1号と同じく、「風」の付録としての発行。「風」47号に挟み込みます。
 今回は2月15日から6月13日までを収録。寄稿は5名、ウリ越後・オオクボ、ウリ東京・中島、ウリ犬山・水田、ウリ名古屋・はな、ウリ近江・ニシムラ。模索舎には今晩納品します。(200円です。)
 直接申し込みは、下記口座まで、送料込290円。
 【郵便振替】
 口座名称:水田ふう
 口座番号:00840-9-34502
  *通信欄に「風」47号と添えてください。

『山鹿泰治——人とその生涯 アナキズムとエスペラント』在庫について2007年06月26日 13:42

「山鹿泰治——人とその思想 アナキズムとエスペラント」向井孝,自由思想社,1984 書影

 岩波新書の新刊『エスペラント——異端の言語』(田中克彦著)の影響か、在庫の問い合せが数件つづいたので、ここにも情報を掲載します。
 『山鹿泰治——人とその生涯 アナキズムとエスペラント』(向井孝著, 自由思想社, 1984刊)は在庫あり。美本なし。店頭にあるのはおそらく模索舎のみ。
 同書には、青蛾房(1974刊)及びJCA出版(1980刊)から刊行された旧版がありますが、口絵24ページ(「マンガノヤマガ」抄、写真)、旧版への批評・感想に答えた「増補版あとがき」を添えた自由思想社版が決定版です。残10部。1冊 1,800円(本体1,500円+送料300円)。

 また、『暴力論ノート——非暴力直接行動とは何か』(向井孝著,「黒」発行所,2002刊)は残すところあと3冊のみ。1,000部完売間近です。1冊、1,000円(送料込)。(増刷を検討中ですが、ひとまず売り切れの際は返金でご容赦を。)

 いずれもお申し込みは下記、郵便振替口座まで。(MN)
 【郵便振替】
 口座名称:水田ふう
 口座番号:00840-9-34502
  *通信欄に書名を添えてください。

こんなくらし、誰が頼んだ?2007年06月27日 16:48

反天皇 風船ステッカーより

 先週、土曜やったかな、松本のTくんから「いまからちょっと寄っていいっすか」という電話。
 夕方から名古屋で(パンクの)ライブがあるので、それに行く途中やという。T君とは3年まえ名古屋でやったサウンドデモが縁で付き合いがはじまったんやけど、地元でも仲間といっしょにいろんな活動をやってるようや。
 「このまえ、六ヶ所村の映画会をやったんっすよ。でも、あとの話し合いで、反原発を言うからには、今の、じゃんじゃん電気を使うひとりひとりのくらしをまず見直すことから、みたいな話になったんだけど、オレ、ちょっと違和感があったんっすよ」「ふうさんは、どうおもいます?」っていうから、わたしは「じゃんじゃん電気つこて、反原発いうたらええんや」と答えた。
 だいたい、わたしらは、じゃんじゃん電気つこてるんやなくて、つかわせられてるんやんか。わたしらに何の相談もなく、ある日駅に行ったら、自動改札になってるし、アパートを立ち退きさせられて、高層アパートに強制移住させられ、電気料金はらわんかったらトイレも流せん。これでもかこれでもかと道路と車をつくり、地上の熱は上がりにあがって、年寄りにつらいから、わたしんとこもついにクーラーを買うはめになったんやんか。こんなくらし、誰が頼んだ?
 まるでわたしらが電気じゃんじゃんのくらしを頼んだみたいな言い方をするけど、間違えたらあかん。これはみんな企業と国が一体になってつくり出した陰謀やんか。自分ちの電気は、しょせん所得が最低(うちの場合はひと月8万円の生活)なんやから、電気じゃんじゃんいうてもしれてるわい。
 そやから電気の節約というよりお金の節約で、電気を消すいうことはあるで。だって、電気いうのはな、一度つくったら貯められへんのやから。電力会社は、夜中でも電気つかってもらわなこまるんや。足りんのは困るけど、ふだんはいつも余って困るほど電気があるから、水力発電所で下に落とした水をまた上にあげるための発電所を原発の電気でつくったりするんやから、一体なにをやってるんだかや。広島の原爆ドームの夜の照明を消したいうて、節電の宣伝してたけど、ほんまによういうわ。
 わたしらだけひたすらウラもオモテもない従順さを育てられ、気がついたらおさきまっくらや。わたしはいちいちいまいましいから、車も持たんし、自動改札もなるべく通らんし、缶ビールも缶ジュースも買いたくないし、暑くてもクーラーはつけんし、電気代は断乎自動払いを拒否し、指定日払いいうて、毎月支払い期限ぎりぎりの日の夕方5時にとりにきてもらってるけど、そんなもんは意地の一念で……。
 なにしろ、わたしらは電気じゃんじゃんつこて(つかわされて)るからこそ、なにがなんでも、原発に反対を云いつづけるしかないやんか。(風)