そこら中にみえない寄場がある2007年06月13日 14:53

 きのうNHKのクローズアップ現代「街をさまよう若者たち——新しい形のホームレス」という番組をみて、慄然とした。ご飯をたべる箸が、とまってしもた。
 高校を出ても田舎には仕事がないので、東京にでてきた。貯金もなく、頼る知り合いもないからアパートも借りられず、ともかく日払いでお金をくれるところをさがして働いてるんやけど、食べるのがやっと。仕事にありつけた日は、インターネットカフェやマンガ喫茶に1日1,000円ちょっとくらいで泊まる(イスしかないから横にはなれない。これじゃ、むかしのドヤの方がましやんか)。
 彼は派遣会社から仕事をもらってる。手にできる日当は5,000円ちょっと。親会社から派遣会社に1人あたりでてるのは、1万2,000円。そのうえ、会社は年金や保険を負担したくないから仕事の契約は14日ごとに区切られる。やっと仕事をみつけても、すぐにまた仕事探しや。仕事がない日の寝床は路の上。

 派遣「会社」なんていうけど、でもこれは釜や山谷の暴力手配師といっしょやろ? えらいきれいな高層ビルに事務所があるだけで、もっと悪質で組織的や。
 きれいといえば、彼の泊まってるインターネットカフェや、マンガ喫茶も一見きれいやった。わたしの知ってる釜ガ崎や山谷とはえらいちがいや。
 釜ガ崎や山谷はしょん便臭かったし、ゴミだらけやし、ほこりっぽいし、見るからに何日も風呂に入ってなさそうなきたないおっちゃんがよろよろ歩いてた。信号なんかまもらんし、自転車に乗ってたらすぐオマワリに職質くらうし、路上にゴザをしいて、鍋や釜やひろってきた雑誌やら、かたっぽうだけの靴やとか、ありとあらゆる品物が並べた店があちこちにあって、その傍の溝におっちゃんが落ち込んで、おしっこもらしてそのままねむってる。ドヤは、布団1枚やっと敷けて、まっすぐ立てないようなとこ。なんやいかがわしい店からヤーさんがでてきて、昼間から見張りをたてて博打をやってる。暴動も起きる……
 そこは、あきらかに他とは違う場所やった。あそこは怖いところやから行ってはアカンよ、なんてサラリーマンとこのこどもはいわれてたやろ。
 景気不景気にもろ影響をうけて、使い捨て可能な存在として理不尽な扱いをうける人びとが暮らす街は、それでも、労働者の街やった。あちこちの飯場を渡り歩いてる人も、正月仕事のないときは帰ってくる場所や。そこにはなにより仲間がいる。仕事がないときはお互いさまいうて、めしをおごってくれる。早朝から夜遅くまでやってる銭湯もあるし、安くて食べられる食堂もある。カップ焼きそばやコンビニ弁当よりずっと栄養もあって、うまい。

 いまや、そこら中がみえない寄場化してる。国家ぐるみ企業ぐるみの組織化で、暴利はスマートにむさぼられる。セビロ姿の悪質手配師の顔つきはすずしいもんや。こういう商売が、なんというても「合法」らしいからな。わたしも競艇場の予想紙の売り子の前はマネキンの仕事ばかりようけやったけど、しかしこのピンのはね方はいったい何なんや? マチ金そこのけのアコギさや。
 画面に映し出された若者たちは高校も卒業してパソコンもできるというのに、仲間もおらず、ひとり孤立して、都会の片隅で疲れはててる。何に翻弄されてるのかわからんまま、どっぷりと不安にひたされて暮らす気分いうのはどんなもんやろ。こんな人たちが、どこにも、わんさと……。
 おわりの方で、フリーターの組合旗をかかげて、派遣会社にデモをかけてる若者たちの姿が映像に出てきた。仕切り板で囲まれてるような「寄場」やったから、なかなか隣のひとと出会えへんかったけど、風向きは変わってきてる。
 さっきもグッドウィルユニオンの若い仲間があつまって、「グッドウィル・折口雅博会長への公開質問状」を出したという話を電話できいた。「データ装備費」なんて実質のない名目で、1人1仕事につき、200円かすめとられてた。ごっそりピンハネしてから、さらにやで。まったく、ようやるわ……。*http://ameblo.jp/goodwillunion/entry-10036492856.html
 もう、だれだって黙ったまま野垂れ死にするわけにはいかんやろ。
 そやけどほんまに、こんなことに……(風)