“かたつむりの会”って何? に答えて2008年09月10日 20:40

 四月のはじめごろから、十月十二日に死刑廃止のデモをしよう——いうビラをつくって配りはじめたんやけど、そのデモの主催は“かたつむりの会”いうなまえや。で、その「“かたつむりの会”って何?」という質問が若い人から出てるというので、そりゃあ無理もない、と思ったので、ちょっと説明します。
 “かたつむりの会”は、はじめ「死刑廃止関西連絡センター」という名で一九七九年に発足しました。
 どしゃぶりの雨の夜やった。桜ノ宮公会堂の古びた大ホールで、映画「真昼の暗黒」と日弁連会長の和島岩吉弁護士の講演があった。七〇人ぐらいは来てたかな。
 「死刑廃止が市民運動として取組まれるのは、大阪でのこの運動が初めてのこと……」という和島弁護士の話に「ヘェー、いままでなかったんや」とびっくりしたのをよくおぼえてる。法律の専門家とか、宗教者ではなくて、運動として初めて、ということなんや。
 わたしは、その前年から獄中に図書を差し入れる「たんぽぽ図書館」いうのを、おんなばっかり七人で始めていて、それで獄中の政治犯・刑事犯を問わずいろんな人たちと知り合うことになったんやけど、「死刑廃止関西連絡センター」の呼びかけや賛同人をあつめて、結成まで持ち込んだのは、“たんぽぽ”で知りあった党派(たった数人?しかいなかったな)の人たちやった。
 ざっくばらんに言えば、「運動」なんてキライやいうようなおんなばかりの“たんぽぽ”にも声がかかったのは、もっぱら市民運動としての体裁をとりたかったからやろな。八〇年二月の「現代と大逆事件——死刑と天皇制を問う」というセンター主催の集会には二百人ほども集まった。でも元気があったのはその一回きり。定例学習会にもわたしは毎回参加してたんやけど、三、四回?目やったかな、待てどくらせど主催者がこず、新聞の案内をみてきた木下達雄さんとわたしと二人だけやった。しょうがないから二人で自己紹介などしあって……というようないきさつがあって、党派のひとはそのあとも何の説明もしないままいなくなって(何があったんやろ)、木下さんが後を引き継ぐかたちで(今は坂口誠也さんが)、まあほんまに、そのときどき、せいぜい三、四人で今日まできてしまった、ということなんや。
 そこで、八六年だったか、身の丈にあった名前にしようと、別名「かたつむりの会」としたんやった。
 でもねえ、八九年のことや。池田浩士さんの講演を、吉本の漫才台本作家のかわら長介さんの演出で、全く芝居じたてにしたバラエティ「絞められて殺されて」はおもしろかったんやで。これは新聞やテレビに大きく取り上げられるし、当日は一〇五席の会場に四百人もつめかけてえらいことやった。更に、九一年は、やっぱり長介さんと組んでの大イベント「寒中死刑大会」には七〇〇人を集めた。
 そして、九二年から一年間をかけての「かたつむり連続講座」は、「殺すこと 殺されること」「死刑の文化を問いなおす」(インパクト出版会)の二冊の本になった。それから死刑執行が後藤田法相によって再開されて、拘置所・官舎への夜回り行動……
 しかし、これらはみんなそのときどきの助っ人に支えられてのこと。そして、九三年に私は犬山に引越してしまったから、坂口くん一人で「死刑と人権」の編集・発行。その印刷・帳合い作業・郵便の受け取り・会計をひとりでやってくれてるOくんもおるし、発送作業にはKさんYさんRさんらが助っ人に来てくれて……。
 それから坂口くんは、死刑執行があると、かならず大阪拘置所に一人でも抗議にいくんやけど、そのときもKさんやRさんやHさんやらがかけつけてくる。そういうひとたちの存在があって、“かたつむりの会”は、三十年(に一年足りない年月)つづいてきたんやった。
 そして、九一年、安田好弘弁護士を中心とした“死刑廃止フォーラム・東京”が誕生。それにつづいて大阪でもアムネスティのひとたちといっしょになっての“死刑廃止フォーラム in おおさか”が生まれた。その時から、坂口くんたちはフォーラムのメンバーといっしょに活動している。
 それにしても、いまでは“かたつむり”唯一の存在証明「死刑と人権」(隔月刊)は、原稿はだまっていても毎号二九頁にもなる部厚さというんやからすごいもんや。発送は獄中・獄外合わせて四百ほど。もちろんいささか長い年月やから、その間死刑囚との手紙のやりとりや面会のほか、風船もって街に出かけてビラまいたり、宣伝カーをしたてて街を走ったり、公開講座や、またある日曜日、天王寺公園の松の木に縄をかけてそれに吊るされる死刑囚のパフォーマンスで署名集めをしたり……もやったけど、要は、もうこの圧倒的な死刑肯定の「世論」の中では、看板をあげ続けるだけでも意味があるんや——と開き直って、ひたすら隔月間のニュース「死刑と人権」の発行だけは守り続けて(現在一五一号)、ともかく消えずに存在してきた。
 で、こんどの「世界死刑廃止デーにデーをしよう」——という、“かたつむり”単独の呼びかけは、ほんとにひさびさのことなんです。
 一〇五人まであと四二人!
 よろしくおたのもうします。
水田ふう

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