イヤな渡世だなァ!!!! 4.30「自由と生存のメーデー」報告2007年05月04日 17:32

 今年の「自由と生存のメーデー」は、新聞やテレビで報じられたように——「主催者の予想をはるかに上回って」デモ時最大で420人が参加。300冊つくった会場資料は1冊も残らなかった。集会場にもデモにも、まるで見知らぬ顔ばかりが7、8割方。
 いろんな意味で、ぼくにはいっそう新鮮かつ画期的なものだった。(デモ以外は一部にしか居合わせることができず、あくまで部分的な感想だけど、忘れぬうちに——)

 4月30日、朝。予報によると、気温は25度まで上がるとのこと。雨の心配はない。サウンドカーは大丈夫。しかし、どんな人がどれだけくるのか? 前夜の皆の予想では、150〜200人というところ。
 会場は、ハングル、中文に派手な地色のにぎやかな看板が目立つ地域。ひる前だったからか、大久保は白っぽくまだ静かだった。会場前に着くと、ショルダーバッグのタスキがけ、野球帽にマスク、ストーカーというか出歯亀というべきか、そんな方々がすでに十数名でお出迎え。3ヶ所に分散したかれらは、時間がたつごとにジャンパー、背広、年嵩で顔色の煤けたのが増えて、あたりを澱ませる。
 一方会場には、フリーター全般労組の呼びかけに呼応した労組関係の人びと、そしていつもの?反戦、反基地デモなどで、どこへいってもすれ違う顔なじみの仲間たち。
 そして、なんとなく緊張したような顔つきの参加者がひとり、またひとりとまた入ってくる。2、3人の友人たちと。いやたった1人で。それも続々と。
 携帯の画面を指差して、公安(それとは知らず)に場所をききながらたどり着いた人たちが、会場の床に体育坐りをしてはじまりを待っていた。

 この日のメーデーは3部構成。
 第1部でメーデー宣言集会。フリーター全般労組をはじめ、外国籍住民、日雇い・野宿者支援や反戦団体など、各地各課題に取り組む団体と個人のメーデー宣言と連帯アピール。第2部が大久保発、新宿大ガードをくぐって大久保へと戻るサウンドデモ。第3部、プレカリアート交流集会。
 ぼくは都合で屋内集会のほとんどに不参加で、実はこの日の会場での雰囲気、議論の内容はお伝えすることができない。そのような不備を断った上で、あえて書き残しておきたいのは、この日の行動が、何よりも当事者自身のものとなったことだ。
 このメーデーには動員がない。一人ひとりの参加者が、不安定雇用層の直面する生き難さを、自分自身の問題として、持ち寄って来た。(ぼく自身を含めて。)派遣社員やアルバイター、契約社員、無職者、失業者……。黙っていれば無限に雇用者の利益に奉仕するだけ。あらかじめ羽根をもぎとられた、手乗り文鳥のような条件の雇用しか見つからない。これからどうやって暮らせばいいのか? ぼやき、悩み、不安、嘆き、恨み、憤り……それを誰に、どこにぶつけたらいいのか?
 新宿の大ガードをくぐる時のドラムの天井に跳ね返る音、実感そのものの短いコールの数々、デモ終了時の確信に満ちたおたけび。そして第3部、話者を囲んで自分の意見をとにかくしゃべり続ける参加者のひたむきな顔つき……。行き場のない感情がたまって、皆な破裂しそうになっているのだ。

 この日の第3部、不安定雇用層の問題を乗り越えるために、どんな方法があるのか。どんな方向をめざすべきか。そんな切実な問題を俎上に載せた討論「制度活用か? 自治空間か?」——では、おそらく重要なことが話し合われたはずである。
 生活保護か、ベーシックインカムか。正規雇用を求めるのか、正規と同じ条件にしろと要求するのか。こたえも考える道筋も そしてまた、会場をともにした一期一会の仲間のこれからも、当然、ひとつではないだろう。
 にもかかわらず、明らかだったのは、この日この行動のために集まった参加者のエネルギーは、実行委が準備し用意した入れ物から存分にはみ出して、なみなみとこぼれ、四方へ流れ出していったことだ。
 デモや集会で、同じことは2度と起きない。自由と生存のメーデー07は、未知の仲間同士が、抱えた問題を共有し、一同に路上で出会う機会となり得た。そして、これまで分散し、点や影としてしか見えなかったものが、くっきりと生々しく、目前に浮かび上がってきた。あたかもあのデモ中に私たちが変身したブルーシートの塊のように。

追記 翌日、フリーターのメーデー、まともに暮らせる賃金を! という言葉だけが新聞に山ほど踊っていた。でもまてよ。それだけじゃない……。
 フリーターの未払い、不当解雇に取り組む労働運動も、そして反戦も死刑廃止も、「生存」を侵し、脅かすものから、削られ、掠められていった「生」を奪い返す闘いとして、ぼくにとっては、ひとつながりのものだ。その横断性を表現するために——ぼくは戦争抵抗者インターのウリとして、このメーデーに参加した。(ウリ東京 中島雅一)

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