あなたの「現実」わたしの「現実」2007年01月10日 15:16

 年末にたまたまテレビのスイッチを入れたら、太田光が〈憲法九条を世界遺産に〉という番組をやってた。このごろはテレビをさっぱりみんから、この番組をみるのははじめて。
 太田光が総理大臣役で、出演者は賛成・反対に15人づつくらいに別れ、ひな壇にすわって意見を戦わす、というしかけなんやけど、憲法九条を世界遺産に、と発言するのはひたすら口角泡飛ばして頑張る太田ばかり。それに対するのは、もっぱら元防衛庁長官の石破なにがしと自民党の(名前知らない)若手議員の二人で、まあ、こんなひとらのいうことはいっつも同じや。
 軍隊のない国家はない。軍隊があるからこそ抑止力になっているんで、それが現実なんや。北朝鮮は核実験やりよるし、そんな青臭いことで、この日本の安全をどうやって守るんや——なんてことをしゃべって、いけしゃあしゃあとした顔つきや。
 そこへ、太田光が「青臭いのはむしろあなた方。わたしは軍隊はもちろん、自衛隊そのものもなくしたいと思ってるんですよ」といったんやけど、若手議員は口をアングリ、ほんまに二の句がつげなくなってしまう場面があった。憲法九条をもつこの国の国会議員でありながら、もはや自衛隊はあまりに自明のことで、なくした方がよいと思ってる人間がいるなんて想像もしてないんやな。

 それにしても「これが現実なんや」ということばは、いかにも説得力がありそうやけど、その立っている立場で「現実」の中味はまったくちがうわけやんか。空から躊躇なく爆弾を落とす側の現実と、何も知らずに畑で仕事してたら山ごと村ごとまるまる吹飛ばされてしまう人たちの現実……
 アフガニスタンやイラクのひとびとの現実からみれば、日本はいまや、爆弾を落とす側の国家としてはっきり見え出してきてるというのが、いまの現実というもんや。独裁者や、大量殺戮の張本人やいうて、フセインを殺してみせたと思ったら、アメリカはもう次の選挙に夢中なんやな。イラクでおこなった殺戮、破壊は取り返しがつかんのに、それはもう選挙運動の駆け引きの道具でしかない。
 日本のこの、のっぺらぼうの「平和」は、気に入らん奴は文字通り殺してきたアメリカの尻にくっつくことでなりたっている。そして、いま憲法を変えて、「戦争のできる国」になることは、むしろ、世界中のひとびとから憎まれ、狙われるいうことやんか。そういう現実がまるで見えない政治家どもから、お前たちは非現実やなんていわれるすじあいはない。
 まあしかし、テレビをみおわって、太田光の意見がどうあるにせよ、この番組は結果として九条をなくす方向に加担してしまってる、と思ったね。(風)

コメント

トラックバック